エアコン

【専門家監修】エアコンから嫌な臭いがする原因と解決策を詳しく解説

久しぶりにエアコンを使ったら、風と一緒に嫌な臭いがしてきました。しばらく運転していれば消えますか?

エアコンからの嫌な臭いは、運転しているうちに消えることもありますが、そのまま残るケースが多いです。また、仮に臭いがなくなったとしても、そのまま使い続けると様々なリスクを発生させる可能性があります。臭いの原因を見つけ、正しい対策をしたほうが安心です。

夏冬に活躍するエアコンですが、動かしたら嫌な臭いが…というトラブルは多くの人が経験しています。じつはこの臭いは、不快感だけでなく体への悪影響も懸念される危険なサインです。


今回はエアコンの嫌な臭いの原因と、ご家庭でもできる対策について解説いたします。


小原 匡人

早稲田大学国際教養学部卒。
その後、ハウスクリーニング専門ポータルサイト「おそうじ合衆国」の立ち上げに参画。公益社団法人全国ハウスクリーニング協会が主催する「ハウスクリーニング技術研修会」へ積極的に参加し、ハウスクリーニング業者との密接な関係構築・情報交換に努めています。収納や清掃をテーマに、様々な記事の監修・執筆にも関与。ハウスクリーニングアドバイザー取得。

エアコンの嫌な臭いの主な原因は3つ

なぜエアコンから嫌な臭いがするんですか?そんなに古い機種でもないのですが…

エアコンの嫌な臭いの原因は大きく分けると3つです。よくあるのはエアコン内部のカビ、次いで生活臭、ドレン配管という排水用の配管の汚れが原因になることもあります。

エアコンは使えば使うほど汚れていくものです。そして汚れるほど臭いが発生しやすくなります。3つの原因を知って効果的な対策や予防に役立てましょう。

見えないところに生えるカビ

エアコンの嫌な臭いでよくあるのは、エアコンの内側の見えない部分で繁殖したカビです。カビは独特の臭い、いわゆる「カビ臭」を発生させます。それがエアコンの風にのって吹き出されるため「エアコンを動かしたら嫌な臭いが…」ということになるわけです。

なぜエアコンの中でカビが繁殖するんですか?水場で発生するのはわかりますが、エアコンは水を使わないですよね。

エアコンの中でカビが生える原因は、エアコンのシステムが関係しています。また、エアコンの内側部分は冷房を使うと結露が発生し、想像以上に湿気でジメジメした環境です。

室内の空気を吸い込み、それを熱交換器によって冷たくしたり、温めたりして室温を調節するのがエアコンの機能です。そのため、稼働中は室内に漂うホコリなどの汚れもまとめて吸い込んでいます。ホコリや汚れは、溜まるとカビの温床になりやすく、それとエアコン内部の水分によってカビが発生しやすい環境ができてしまうのです。繁殖にも適した環境であるため、放置しているとどんどんカビが増えて臭いも強くなります。

室内に溜まっている生活臭

エアコンを設置している室内の生活臭も、エアコンのイヤな臭いの原因になります。


エアコンは室内の空気を吸い込み、それを冷やしたり温めたりして吹き出すシステムだというお話をしました。臭いが付いた空気を吸い込んだ場合は、その臭いがついたまま吹き出されてしまうのです。繰り返し臭いのついた空気を吸い込んでいる場合は、フィルターに臭いが付着していることもあります。

室内の臭いでよくあるのは

  • タバコのヤニ
  • ペットの臭い
  • 調理中の油
  • カビ

このようなものです。


カビは壁紙の裏側や天井裏などで繁殖しており、生活の中では臭いを感じることはほとんどありません。しかし、壁や天井近くに設置されるエアコンの場合は、カビの臭いをダイレクトに吸い込んでそれを吹き出すため、人でも感じるほどの臭いになることがあります。

ドレン配管の汚れ

ドレン配管とは、冷房を使った際に発生した水を屋外に排出するための配管です。エアコンが設置されている壁を外側から見るとホースが伸びているのが分かると思います。


このホース内が汚れていたり、ホースの出口付近に臭いが出るものが置かれていたりする環境も臭いの原因です。エアコンが室内の空気を吸い込む力はとても強く、ドレン配管内の空気も吸い上げます。ドレン配管の中に臭いが付いた空気が溜まっていたら、それもそのまま吸い込み、そして吹き出してしまうため、室内に嫌な臭いが放出されてしまうわけです。

なるほど。カビや溜まった臭いが風と一緒に部屋に届いて臭いを出しているわけですね。

そうですね。エアコンは風を作り出しているのではなく、室内から取り込んだ空気の温度を変化させて吹き出しています。そのため、どこかで臭いが付くとそのまま室内に臭いと一緒に出てきてしまうわけです。鼻で吸って口から吐く、私たちの呼吸を想像すると分かりやすいかもしれませんね。

エアコンの嫌な臭いを放置するリスク

臭いがするだけで問題なく使えている場合は、そのままにしても大丈夫ですか?

放置はおすすめできません。臭いの原因がカビであった場合、風と一緒にカビの胞子も放出されている可能性が高いです。また、汚れが溜まっている場合は故障や電気代が高くつくリスクも考えられます。

「しばらくすれば気にならなくなるし…」とエアコンの臭いを放置する人もいますが、長期間そのままにするのは危険です。臭いを発するエアコンをそのまま使い続けた場合のリスクについてお話します。

カビによる体への悪影響

嫌な臭いの原因がカビである場合、エアコンを使って風が出始めるとカビの胞子もまき散らされています。人がそれを吸い込むと体に影響が出ることがあります。

  • アレルギー性鼻炎
  • アトピー性皮膚炎
  • 夏型過敏性肺炎
  • 気管支肺アスペルギルス症
  • ぜんそく
  • シックハウス症候群

あくまでも一部ですが、カビが原因の疾患にはこのようなものがあります。必ずしもこのような疾患にかかるわけではありません。でも、リスクがあることは覚えておきましょう。子どもや高齢者がいるご家庭ではとくに気を付けて欲しいです。

エアコン機能の低下

嫌な臭いがするエアコンの多くは内側部分がカビやホコリなどで汚れています。フィルターや熱交換器などに付着したこうした汚れは、空調性能を低下させる原因です。室内が冷えにくい、温まりにくい状態になり、設定温度を維持するためにエアコンはより多くの電力を消費して風量を維持しようとします。その結果、電気代も高くなってしまうでしょう。

故障や不具合が起きやすくなる

内部が汚れたまま放置されたエアコンはさまざまな故障・不具合のリスクを高めます。水漏れはその代表的なものです。水分を集める「ドレンパン」という部分に汚れが溜まって排出が追い付かなくなり、汚れやカビが混ざった水が逆流することで発生します。壁や床が汚水で汚れてしまうので、エアコンの不具合だけでなく家や家具にまで影響が出てしまうかもしれません。

エアコンを動かすと咳やくしゃみがでるのはもしかして……

エアコンから出る風にカビやハウスダストが混ざり、アレルギー症状を引き起こしているのかもしれません。花粉を吸いこんでいる場合は花粉症も引き起こします。臭いがなかったとしても、エアコンの稼動と同時に不調が現れる場合は内部まで徹底洗浄したほうが安心です。

やってはいけないエアコンの嫌な臭い対策

エアコンの臭いをすぐに消したいのですが、消臭スプレーや消臭剤を使って一時しのぎしても問題ありませんか?

エアコン用以外のスプレーを使用するのはNGです!臭いが取れないどころか、悪化させる可能性や、最悪の場合はエアコン本体の故障を引き起こすこともあります。

臭い対策というと消臭スプレーや消臭剤が思い浮かぶはずです。しかし、消臭スプレーは空間や布製品に対する消臭を得意とする製品で、エアコンに吹きかけてもほとんど効果は得られないと思われます。


効果がないだけでなく、スプレーに含まれる成分がエアコン内部に付着してさらに汚れを増やす恐れや、金属を腐食させる可能性も。除菌スプレーも同様のリスクがありますので、エアコン用以外のスプレーは使用しないでください。


置き型の消臭剤であれば、お部屋の臭いを軽減することは可能かもしれません。しかし、カビや生活臭が原因の臭いの場合は、エアコン稼働中は常に臭いが放出されることになります。すぐに消臭剤の性能を上回ってしまうため、消臭ではなく臭いの根本を絶つ対策が必要です。

エアコン用の消臭スプレーは安全ですか?

エアコン用と書かれたものであれば使用しても問題ないと思われます。しかし、消臭はあくまでも臭いを消すだけで、カビや汚れを消せるものではありません。臭いの元を探り、それを排除するまでの応急処置として使いましょう。

エアコンの嫌な臭いを解決する5つの正しい対策

エアコンの臭いを消すためには何をすればいいですか?自分でできる範囲のものや応急処置はありますか?

必要なときに快適にエアコンが使えないのは困ったものですよね。すぐにできる臭いを軽減する方法や、ご自宅でできる範囲の対策もあります。

エアコンの嫌な臭いを解決できる3つの応急処置と2つの掃除方法をご紹介します。これらの方法を試しても臭いが残る、またはすぐに同じような臭いや現象がおきる場合はより専門的なエアコン内部の清掃が必要です。ご自宅でできる範囲の対策として参考にしてください。

【応急処置】窓を開けてしばらく稼働させる

数ヶ月間動かしていなかったエアコンの内部には、ホコリが溜まっていることがあります。稼働するとホコリが放出され、臭いも発生するので10分ほどは窓を開けて換気しながら稼働させましょう。


少しのカビであればこれだけでも臭いが軽減します。カビの胞子が部屋に充満することも防げるので、久しぶりにエアコンを使うときはぜひ実践してみてください。

【応急処置】暖房の最高温度設定で1時間稼働する

多くのメーカーのエアコンでは、暖房の設定温度は30度~32度が最高です。この温度で1時間ほど暖房を使うと、エアコンの内部が乾燥します。これだけでカビが消えるわけではないのですが、一部のカビを死滅させ、死骸を外に追い出すことが可能です。部屋の中にカビが残ってしまうと再び吸い込まれてしまうため、必ず窓は開けておきます。


これは多機能エアコンについている「内部クリーン」という機能に似た働きです。内部クリーン機能が付いているエアコンの場合は不要ですが、ない場合は定期的に行うとよいでしょう。

【応急処置】冷房最低温度設定で1時間稼働する

冷房の最低温度16度~18度で1時間ほど運転するのも効果的です。冷房によって発生する結露はカビの原因ですが、大量の結露はすぐに水になり、ドレン配管に流れていきます。この時にカビの死骸や汚れを押し流すため、簡易的な掃除ができて臭いの軽減が可能です。その後に送風や暖房によって内部を乾燥させておけば湿気がこもる心配もありません。


ただし、冷房を使用した際に水漏れをした場合はすぐに止めましょう。排水経路に汚れが詰まって、水が逆流しているからです。

フィルターを掃除する

フィルターに付着しているホコリが臭いの原因になっていることもあります。とくにタバコ臭や油臭など、生活臭をエアコンから感じる場合はフィルターの掃除で解決できる可能性が高いです。

フィルター掃除のポイントは、外す前に掃除機でホコリを吸い取ること。こうすることで外した際のホコリの舞い散りを防ぎ、目詰まりもしにくくなります。

吹き出し口やルーバーを掃除する

風が出てくる部分の吹き出し口や、風向き調節をするためのルーバーに汚れやカビが付いているのも臭いの原因です。覗き込んでみて、黒い斑点や汚れがある場合は拭き取っておきましょう。

吹き出し口やルーバーにカビが生えている場合は、内部にもカビが繁殖している可能性が考えられます。時間を作って内部のお掃除をするか、専門業者に依頼して徹底的に洗浄してもらいましょう。

エアコンの嫌な臭いを予防するためのコツ

エアコンはいつでも快適で安全に使えるようにしたいです。臭いを予防する方法はありますか?

定期的なお手入れでカビを予防するのが効果的です。汚れが溜まっていなければ掃除も簡単なので、掃除のルーティンに組み込めば安心して使えるようになります。

エアコンの臭い予防には、日ごろから汚れや臭いが残らない環境づくりが大切です。定期的に行いたい掃除と室内環境への意識を解説しますので、ぜひお試しください。


定期的な掃除をする

定期的な掃除はエアコンの嫌な臭い予防にとても有効です。フィルター・内部・ドレン配管の清掃を定期的に行いましょう。


フィルター掃除:2週間に1回(稼働時間が長い場合はより頻繁に行いましょう)

内部清掃:1年~2年に1回

ドレン配管:使い始める前(シーズン毎)


フィルターの掃除をこまめに行っていれば、内部まで汚れやカビが繁殖する速度は緩やかです。

しかし、全く汚れないというわけではないので、最長でも2年に1度は徹底的なエアコンクリーニングをした方が安心でしょう。エアコン専用の洗浄スプレーを使用してもよいですが、汚れが落としきれないことや、故障を引き起こすこともあります。自分で内部の掃除をする時は慎重に行いましょう。

室内に臭いの原因を作らない

室内に残り続ける臭いはエアコンのフィルターに付着し、臭いを発生させる原因になります。できるだけ臭いの元になるものを長時間残さないようにしましょう。

  • タバコのヤニ
  • ペットのトイレシート
  • 匂いが強い料理
  • 汗が染み込んだ布製品
  • 生ごみ

これらはキッチンやダイニングではよく発生する臭いの原因です。できるだけ早く処理して、エアコンが臭いのついた空気を吸い込み続けないようにしましょう。

ときどき送風運転をする

気候が落ち着いている季節はエアコンを使わないことが多いです。しかし、稼動していなくても内部にはホコリが溜まっていきます。ホコリを温床にカビが繁殖しないように、ときどき送風運転をしておきましょう。


まったく使わない時期でも、頻度は月に2回ほどで十分です。「エアコンの嫌な臭いを解決する5つの正しい対策」でご紹介した暖房30度や冷房16度の方法も有効ですので試してみてください。

カビを徹底的に排除する

カビは少しでも残っていると条件が整ったとたんに一気に繁殖します。カビが増えないようにエアコン内部の乾燥を意識しつつ、掃除で徹底的にカビを除去しましょう。エアコン用の防カビ剤も使用すればより安心です。

エアコンの中からカビを完璧に排除することなんてできるんですか?

一度でもカビが繁殖したエアコンの場合は、ご家庭で完璧に処理することは難しいと思います。ある程度数を減らすことは可能ですが、より徹底的な清掃を求める場合はプロに任せた方が確実です。

エアコンの嫌な臭いを根本的に解決するには業者の利用がおすすめ

エアコンの嫌な臭い対策や予防は自分でもできることがあります。しかし、掃除をしても臭いが取れない場合や、何年も内部清掃をしていない場合は、プロにお任せするのがおすすめです。家庭ではできないエアコン内部の清掃から強力な防カビ剤の塗布など、プロにしかできない徹底的なエアコンのお手入れができます。


もちろん間違った方法で故障させてしまったり、家を汚してしまったりする心配もありません。何より手間と時間をかけずに、気持ちよくエアコンを使えるようになります。


エアコンの臭いでお困りの際は、ぜひプロにお任せください!


小原 匡人

早稲田大学国際教養学部卒。
その後、ハウスクリーニング専門ポータルサイト「おそうじ合衆国」の立ち上げに参画。公益社団法人全国ハウスクリーニング協会が主催する「ハウスクリーニング技術研修会」へ積極的に参加し、ハウスクリーニング業者との密接な関係構築・情報交換に努めています。収納や清掃をテーマに、様々な記事の監修・執筆にも関与。ハウスクリーニングアドバイザー取得。